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那須別荘新築した体験談
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30. 設計図はシナリオ

設計図はシナリオ
映画の監督や俳優が「撮影が始まった段階ではシナリオに完璧なものなどありえない。撮影していく中でどんどん変わっていく。シナリオが完成するのは映画が完成したときです」と話しているのを聞いたことがありませんか?建築の設計図はまさに、その映画のシナリオと全く同じです。頭を悩ませて、考えに考え抜いて作られた設計図も、ひとたび現場の作業が始まれば変更や追加の連続です。実際に建築作業を進めていく中で、より完成度の高い設計図に、どんどんと変化します。最終的には家が完成したときが、設計図が本当に完成する時だと思っていれば間違いないでしょう。良い建築家はそのことを良く分かっています。途中変更や追加など当たり前、それがきちんと現場の作業に反映されるか、常に気を遣ってチェックしていくのが自分の仕事であると理解していますので、施主の要望や話にきちんと耳を傾け、足りない部分があればアドバイスをしてくれます。

ところが建築業界には、ひとたび設計図が決定したら「不備が途中で発覚してもその通りに建築するのが自分達の仕事である」と勘違いしている業者がいます。途中変更や追加工事を申し出ようものなら、「勘弁してくださいよお。やってもいいですが、追加費用が相当掛かりますよ」などと言ってきます。しかもそういった業者は“なるべく短時間で現場を終えて数をこなしたい”という魂胆が見え見えで、安普請のパネル工法で2ケ月くらいでパタパタとあっと言う間に別荘を建築してしまいますから、「やっぱりこうしたかった」と思った時にはすでに手遅れで別荘が出来上がってしまっていた、という事態も珍しくありません。普通、きちんとした業者が、きちんとした家を建てるには6ケ月くらいはかかるものです。そして建築工事が進んでいく中で設計図を眺めていたら、「やっぱりここはこうしたいよね」という変更や追加が出るのも良くあることです。それにきちんと対応してくれない業者にあたってしまったら、それは悲劇としか言いようがありません。

設計図がシナリオにしか過ぎないということをきちんと理解していれば、“施主は建築が始まったらポイントポイントで現場に進行状況をチェックしに行かなければならない”ということにも納得がいくはずです。図面や頭の中で考えていたことが実際の形となったときにどう感じるか。それを自分の目で確かめながら、イメージと違えば建築士さんと相談して、より良い方向に修正する。そういった作業の積み重ねで最終的な作品としてのシナリオ(=別荘)が完成するのです。ところが悪い業者の場合は「オーナーさん、遠くに住んでいるから現場に来るのも大変でしょう。大丈夫、後は任せて下さい」と安心させて、施主に考える隙を与えないという手口を使ってきます。それは別にオーナーを気遣って言っている訳ではないのです。そんな言葉を真に受けて、きちんとチェックしに行かなかったら実は欠陥住宅だったというのでは、半分は施主にも責任があると言われても仕方がないことでしょう。

別荘建築というドラマの中で、主役兼監督は施主だということを忘れてはいけません。主役が生き生きと楽しく、満足の行く別荘生活を送るために、ピッタリのシナリオを作り上げなければなりません。そのためにはポイントポイントで現場を訪れ、全体の間取りや空間をチェックしながら家の中を歩いてみて、天井の高さやドアの開閉、スイッチ類の位置やコンセントの位置など、頭の中でイメージしながら想い浮かべてみることが重要です。主役本人が舞台の中で実際に動いてみることで、図面だけでは見えなかった様々なことが分かってきます。具体的な“別荘ライフ”の24時間を頭の中でシミュレーションしながら色々と動いてみて、不具合を感じたら変更や追加をきちんと要望すること。それは主役兼監督である施主がやるべき当然のことなのですから、遠慮してはいけないのです。

もっとも、カオリが設計を依頼した一級建築士の円谷さんの場合は「やっぱりここはこうした方が良いと思うんですけど、今から変更しても良いですか?」という連絡が突然入り、そこから一緒に方策を考えるという場面が結構ありました。
本来は現場寄りな筈の建築士自らそんな調子ですから、建築にはとても時間がかかりました(1年くらい)。
施主よりも建築に夢中になってしまう円谷さんの場合は、一緒にその時間を楽しむ心の余裕も必要かなと感じました。

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