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那須別荘新築した体験談
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64. 手作り照明

手作り照明
「ダチョウの卵を使って照明を作りましょう」
あるとき、円谷さんが突然そのような提案をされました。
「ダチョウの卵ですか?面白そう!」
鳥大好き人間のカオリとしては、大賛成です。それにしても突然、どうしたのかしら?と思いましたが、実は最近建築された建物で、ダチョウの卵の照明を採用している物件があり、それを見た円谷さんが対抗心をメラメラと燃え上がらせたみたいなのです。
「これから実物を見に行きましょう。なーに、知り合いだから大丈夫ですよ」
すっかり乗り気の円谷さんに連れられて、ダチョウの卵の照明を見に行きました。行き先は新築の医院で、以前にレーモンド設計事務所に勤めていた方が独立して手掛けた物件だということでした。どうやらその背景が円谷さんの闘争心をかきたてたようです。そういう、たまに子供みたいな所があるのも円谷さんの良いところ。

「どうです、面白いでしょう」
病院の受付前の通路にぶら下がっているダチョウの卵の照明を見ながら円谷さんが関心するように言いました。
「ほんとだ、可愛いですね〜」
独特の質感が感じられる卵の照明にカオリも思わずニヤニヤモードです。
「この有機質な感じがいいんですよお。どうやって作ってるのかな。すいません、写真撮ってもいいですか?スイッチ入れてもらえます?」
受付のお嬢さんに話しかける円谷さん。受付の方は笑いながら照明のスイッチを入れて下さいました。電気が点くと、卵の殻の微妙な模様が浮き出てきて本当に温かい感じです。今にも何か生まれそう。
「いやあ、いい。実にいいですねえ」
しきりに関心している円谷さん。デジカメで何枚も写真を撮っています。ですがカオリとしては、医院全体の設計も大いに気になるところ。水平を意識した建物全体のバランスや和紙の壁紙など、なかなか良い感じです。この全体の雰囲気の中から、どうして「ダチョウの卵の照明」に目がいくのか?カオリとしては、円谷さんの目の付け所の方が面白いと思ってしまいました。

ダチョウの卵の照明作りは思ったよりも大変でした。まず、殻が固いのでドリルで何箇所も穴を開けて、何とか手が入るくらいの穴を開けます。そして40℃くらいのお湯で煮て、卵の中に付いている薄皮をキレイに剥がします。そして電球をセットしてワイヤーで吊って仕上げます。まさに手作り照明ですね。円谷さんが何人もの職人さん達の協力を得て、何とか作り上げることが出来たのだと、苦労話を聞かせてくれました。卵を煮るのは職人さんの奥さんが料理の合間にしてくれたそうです。

よく、海外の雑誌で「あっ、お洒落だな」と思うような照明は、実は手作り照明である場合が多いようです。それらの照明からは工業製品では決して出せない、手作りならではの温かさを感じます。
「どんなに素晴らしい工業製品であっても、結局は手作りには勝てないんです。メーカーがそれをやったら時間がいくらあっても足りない。それでは商売として成り立ちませんからね」
苦労の甲斐があって、ようやく完成したカオリハウスの“ダチョウの卵の照明”を見ながら、円谷さんがつぶやくように言いました。カオリはなるほどと思うと同時に、安易な便利さで工業製品に慣れてしまった人々のなかで”手作りを見直そう”という動きが徐々に広まっていることに考えを巡らせました。そんな手作りという考え方が、これからの日本では重視されるのかも知れませんね。

ダチョウの卵の照明は見る角度によって形が変わります。穴から覗く電球はまるで卵の黄身のようです。昔から優秀な設計者は建物のイメージに合わせて照明まで設計すると言われますが、カオリハウスのイメージはダチョウの卵だったのでしょうか?卵は太古から生命の象徴として神聖視されてきた歴史があります。カオリは大いに気に入ってしまいました。

手作り照明2
玄関の廊下に二つ、このようにダチョウの卵がぶら下がっています。

手作り照明3
有機質の温かさがなんとも言えない雰囲気を醸し出します。

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